「所有者が車を取りに来ず、連絡も取れないまま半年が過ぎた」「敷地内に知らない間に車が放置されている」、土地を所有していると、このようなことが起こり得る可能性があります。
このように、勝手に自分の所有する土地に車を放置されて、相手とも連絡がとれない場合、どのように対応をすればいいのかでしょうか。わざと放置しているのか、車を取りにくることができない状況なのか、そもそも誰の車なのかすらもわからないといった場合もあるでしょう。
こちらでは、放置車両に困った時の対応方法について解説します。
放置車両の撤去はどうする?土地の所有者の対応方法
ご自身の所有する場所に、他人が車を放置している場合どのような対応をすればいいのでしょうか。
警察への報告と相談
まず、最初にするべきことは警察への報告と相談です。
個人の私有地に他人の車が放置されている場合、個人間のことになるため、原則民事不介入の警察に対応をお願いすることはできません。車の置かれている場所が私有地ではなく、公共の道路や公園といった場所であれば行政が対応することになりますが、個人の駐車場や空き地に車を置かれてしまった場合は、警察も取り締まりができないのです。
ただ、放置車両を警察に移動してもらうことなどはできませんが、警告や注意をしてもらうことはできます。まずは、警察に放置車両があることを報告し、どう対応するか相談を行いましょう。特に、普段あまり人が来ない敷地(空き地)などに車が放置されていると、放置車への放火やイタズラや、模倣してゴミを置くなど、さらに別の二次犯罪などが起こる可能性も誘発してしまいます。気づいた時点で、なるべく早めに警察へ報告を行いましょう。
警察に放置車両について報告をすると、その車がなにか犯罪に関わっていないか、盗難車なのか等を調べてもらうことができます。また、犯罪に関与している車の場合は、警察が証拠車両として押収引取を行って、保管することもあります。警察が放置車両の所有者について確認が取れても、土地の所有者には個人情報になるため教えてもらえない場合もあります。教えてもらえなかった場合は、ご自身で所有者を確認しなければなりません。
路上放置、路上駐車の取り締まりが強化されて17年。
路上取締りを行っている緑の制服を着ている人を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。緑の制服を着ている人は民間の駐車監視員です。2006年6月1日に行われた道交法改正により、違法駐車の取り締まりが警察から民間へ業務委託することが決定し、全国に委託された駐車監視員が配属されました。令和4年4月時点で、全国52法人約1,900人の駐車監視員がいます。駐車監視員による令和3年中の放置車両確認による取り締まりの数は年間約61万件で、全体約91万件のうちの約6割が緑の駐車監視員によるものとなっています。
車の移動をするように警告を出す
警察に相談をして、放置車両が犯罪に関わっていないことや盗難車でないことがわかったら、まずは放置車両の見えやすい部分に警告文を貼りだしましょう。(放置車両が犯罪に関わる車両だった場合は、警察で移動・保管対応となります)
警告文を貼りだす意味は、車を放置した人に対して『何も警告をせずに撤去等をしたわけではない』ということを明らかにするためです。警告文の内容には、『車両の所有者及び使用者に対して、この土地の所有者と管理人は誰か・何日ごろからこの放置車両があるのか・何日を期限として車の撤去と処分をする旨・撤去や廃車をした場合にかかった費用は請求する事、警察に相談していること、連絡先』をもれなく記載しておきます。この警告文を貼っていることや、何日から貼りだしているかがわかるように写真や動画等を撮影しておきます。
警告文に記載した期限までに、所有者から車を移動する等の連絡がなにもなければ、所有者へ車を撤去する通告をしなくてはいけません。そのために車の所有者の連絡先を調べる必要があります。
警察に警告文を貼りだしたが連絡がないと伝えて、所有者の連絡先を教えてもらえた場合はその連絡先へ、土地の所有者が車の所有者について元々分かっている場合もその連絡先へ電話もしくは郵送で連絡をとります。しかし、警察から連絡先を教えてもらえなかったり、まったく知らない間にその車が置かれていて相手の検討もつかない場合は、車体から所有者情報を調べることになります。
放置車両の所有者情報を調べる
警察に相談をした際、車の所有者の個人情報自体は教えてもらえないものの、車両の車台番号や車両登録番号は教えてもらえる場合があります。教えてもらえなかった場合はご自身で、打刻されている車台番号とナンバープレートの車両登録番号を確認します。
放置車両が普通自動車であれば、車両登録番号(ナンバープレート)と車台番号(打刻されているもの)を控えて、最寄りの運輸支局に行き、登録事項等証明書の交付申請をすると現在の車検証上の所有者の住所と氏名が確認することができます。もしもナンバープレートが外されてしまっていて、車両登録番号がわからない車であっても、打刻されている車台番号の全桁確認ができれば、同じく交付申請は可能です。この方法であれば、車に鍵がかかっていて車内を点検できない、車内に車検証等あるかどうかわからない車でも、所有者を確認し郵送で連絡を取る手段が可能になります。
放置車両が軽自動車であれば、車両登録番号と車台番号で所有者の照会をできる軽自動車検査ファイル照会願出書があります。しかし、こちらのファイルは照会に必要な書類として、土地の登記事項証明書の写し、土地の公図、住宅地図、放置状況が分かる複数日撮影の写真、放置車両のフロントとリアのナンバープレート部分が映った写真、放置車両の置かれている場所が地図上のどの位置にあたるか等、土地の所有者本人以外による届人の場合は、土地の所有者の委任状が必要です。普通自動車と比べると必要書類の準備が複雑な上に、揃えた書類をもって最寄りの軽自動車検査協会へ行き、提出する必要があり大変です。
内容証明を郵便で送る
放置車両の所有者の連絡先を確認できたら、電話で連絡をするか内容証明郵便を送り、期日までに所有者側が連絡または撤去しなければ、処分を辞さない旨を通知します。
内容証明は記録として残すため、下記の内容を記載します。
- 放置車両が放置されている期間はいつからいつまで
- 放置車両にについて警告文を貼りだしたが連絡がなかったこと
- この通知到着後連絡がない、車を撤去しないのであれば処分を辞さないということ
- その場合の処分にかかった費用は所有者へ請求すること
- その場合の処分については所有権を放棄することに同意すること
- この通知到着後何日が回答の期限になるか
内容証明郵便は、送り主、送付相手、郵便局の三者分に同じ内容の書面が必要となります。
郵便局から内容証明郵便を送ると、郵便局に送った内容と日付を証明してもらうことができます。到着しているかどうか確認をとるために、送付方法は配達記録付の書留郵便で送ります。配達記録によって、内容証明郵便が相手に到着していることが確認できれば、上記の内容証明の通りに撤去または連絡の期日まで相手の返答を待ちます。
内容証明が届いた放置車両の所有者から、期日までに連絡があった場合は速やかに車の撤去をすることを期日を切って約束をするか、解体業者へ引き渡す同意を取り、自動車の所有権放棄と解体処分の承諾書を書いてもらいましょう。内容証明郵便到着は確認をとれたものの、期日までに連絡もなく車の撤去もされなかった場合は、放置車両の所有権の放棄と処分に同意したと見なして車の処分を行います。
内容証明郵便を送ったが、相手が受け取りを拒否した場合、または内容証明郵便が該当者なしで返送されてきた場合は、相手側に通知ができていないもしくは相手側が所有権を主張し、車を撤去するとトラブルになる可能性がありますので、放置車両が置かれている場所を管轄する簡易裁判所にて車両撤去及び、土地明け渡しを求める訴訟を起こします。裁判所での判決が確定するとで、車両撤去に向けた強制執行の手続きを行うことができます。執行官が車両御査定を行い無価値であると判断すれば、放置車両の廃棄処分を解体業者へ依頼することが可能になります。ただし、裁判所での訴訟には費用と時間がかかり、土地の所有者には負担がかかってしまうことになります。法廷での手続き等は、一個人での対応は難しいため、無料法律相談等を利用し、相談してみることをおすすめします。また、費用についても相談してみましょう。
車両番号車台番号の確認ができない放置車両の場合
警察に相談をして確認してもらったところ、車両内に車検証等の車の情報がわかるものもなく、ナンバープレートが取り外されて、打刻が削り取られていたという場合があります。この場合、警察でも所有者の確認ができなかった車両となり、放置車両の所有権はすでに放棄されているものと見なされます。所有権が放棄されているものとなっている放置車両については、「無主物の帰属」という民法239条に則り、土地所有者等が放置車両の所有権を取得することになります。この場合は、土地の所有者の人は廃車解体業者へ連絡し、車の引取りと処分を依頼しましょう。
放置車両の廃車処分を依頼するなら
放置車両の廃車処分を依頼するには、廃車の引取り作業と解体作業を任せることができる廃車専門業者を探すことになります。
基本的には車の鍵はないことがほとんどとなりますので、タイヤが転がればニュートラルにいれて、けん引し積載車に載せます。また、放置期間が長い車になるとタイヤのエアーが抜けていて、けん引できないことがあります。その場合は、車の窓を割ってユニックで上に吊り上げることで積載し車を引き揚げます。引取後は、車の解体設備をもつ業者でリサイクル法に基づいて解体し、パーツ毎にリサイクルされます。廃車専門業者を探す時は、廃車の引取りのレッカー費用と解体費用がかからないところかどうかを確認し、できるだけ土地の所有者の負担がなく車の処分ができるように手続きをすすめるようにしましょう。