カジノ・ロワイヤルとアストンマーティンDBSから感じる007の美学

車の豆知識

アストンマーティンは国家的な高級車という珍しい事例です。唯一無二のブランド価値を持つ自動車メーカーとも言えます。後にも先にもこのようなブランドは現れないでしょう。

こちらでは、アストンマーティンの歴史やラインナップ、そしてイギリスの国民的映画007とアストンマーティンについてご紹介します。

アストンマーティンの歴史

まずはアストンマーティンの歴史からご紹介します。

世界で一番美しいクーペ

アストンマーティンと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ある自動車評論家の「世界で一番美しいクーペ」という言葉です。

世界で一番美しいクーペと言われるアストンマーティンですが、その歴史は1913年にまでさかのぼります。設立以来イギリスを代表する高級スポーツカーメーカーとして知られており、創業以来超高価格帯のスポーツカーを中心に生産しています。性能と品質を重視した車作りを手がけていることもあり、1960年代より愛用しているプリンス・オブ・ウェールズ(王位の法定推定相続人たる王子)からロイヤル・ワラントを授与されています。

007とアストンマーティン

さらに映画007では、劇中車ジェームズボンドのボンドカーとして登場し一躍有名になりました。アストンマーティンは007の主役であるジェームズボンドのアイコン的な車で、007シリーズ中において確固たる存在感を示していたのです。

アストンマーティンのブランド力を見る際に絶対に外せない指標として007があります。

映画007はイギリスの国民的な映画であり、大きな影響力をもっています。イギリスの上流階級において、007シリーズは非常に有名な映画です。007の新作が発表される時はイギリスの王室の方々を招いて上映会が開かれますし、2012年にイギリスで開催されたロンドン夏季オリンピックの開会式では、バッキンガム宮殿でボンドにエスコートされたエリザベス女王が、ヘリコプターからパラシュートでスタジアムに舞い降りるという演出があり、大きな話題となりました。

このように作り上げられるブランドイメージというのは測り知れないものがあるのです。上記からアストンマーティンの魅力や売り上げを語るなら、007は切っても切れない関係があるといえるのです。したがって、アストンマーティンという車を見る際に必ず007におけるブランディングが含まれていると考えてまず間違いないでしょう。

アストンマーティンの種類

アストンマーティンのラインナップをご紹介しましょう。

VANTAGE

アストンマーティンヴァンテージはスポーツカーの12年間生産されていた以前のモデルの後継として2017年11月に発表されました2シーターの車です。新しいヴァンテージはDB11と共通のプラットーフォームを採用しています。さらに両者メルセデスベンツのエンジンを採用しています。加速も素晴らしく0~100キロに3.6秒で達します。さらに最高速度は314キロです。

DB11

DB11はアストンマーティンが2016年から生産するグランドツアラーです。2016年3月のジュネーヴ・モーターショーで、DB9の後継としてデビューしました。アストンマーティンがダイムラーと提携後に発表された最初のモデルでもあります。DB11は全く新しい5.2リッター(5204 cc)ツインターボV12エンジンを積載し、初めてターボチャージャーを搭載した生産車のシリーズとなりました。

DBS SUPERLEGGERA

新しいスーパーGTフラッグシップであり、Vanquish Sの後継モデルです。大成功を収めたVanquish Sに代わるモデルを開発することは容易なことではありませんでしたが、DBS Superleggeraは、その役割を担っている重要な車です。最高出力と最大トルクは、それぞれ725PSと900Nmに達し、最高速度は211mph(約340km/h)です。0〜100km/h加速はわずか3.4秒、0〜160km/h加速は6.4秒です。DBS Superleggeraは、素晴らしいドライブ感とスポーツカーの中でも最高レベルの加速力を持った車です。実際、4速固定の80〜160km/h加速に要する時間は、わずか4.2秒です。その無敵とも言えるスペックから考えると、孤高のスーパーGTであり、同価格帯のライバルに真っ向から勝負を挑むモデルとなります。さらに、デザイン面においては完璧な形状に仕立て上げられたカーボンファイバー・ボディパネルを纏う最新モデルは、力強く個性的なスタイリングを誇ります。そのデザインは、アストンマーティン製5.2リッターV12ツインターボのパフォーマンスに完璧にマッチしています。V12ユニットは、圧倒的なパワーと強大なトルクを発揮して、息を呑むようなレスポンスと驚異的なパフォーマンスを発揮します。

RAPIDE S

ラピードSに与えられたエンジンは、最新世代の「DB9」や「ヴァンキッシュ」にも積まれる第4世代のV型12気筒6.0リッター「AM11」型ユニットです。このところ高価格帯のハイパフォーマンスモデルにもダウンサイジング過給エンジンの採用例が増えている中で、アストンマーティンが自然吸気のV12エンジンをチューンアップして搭載したことに潔さを感じます。最高出力は410kW(558PS)/6750rpm、最大トルクは620Nm/5500rpmとなり、標準のラピードに対して81PS/20Nmのスペックアップを果たしました。0-100km/h加速は4.9秒と、0.3秒も短縮しています。組み合わされるトランスミッションは、「タッチトロニック3」と呼ばれる6速ATで、セレクターレバーはなく、シフトポジションを選択するボタンがセンターパネルのエンジンスタートボタンのわきに設定されているのもユニークです。

VANQUISH S

『ヴァンキッシュ』は、現在2代目ですが、デビューから約4年が経った2016年11月、その進化型として『ヴァンキッシュS』が発表されました。新型『ヴァンキッシュS』は、従来型をベースにエンジン、シャシー、エアロダイナミクスを徹底的に見直したことで、より優れたポテンシャルと高い運動性能を獲得しました。また、エクステリアでは、シャープなスタイリングを手に入れました。
最大のトピックスは、6L自然吸気V12エンジンの進化です。空気を取り入れるインテークシステムに改良が施され、吸気効率が向上しました。具体的には、大きくなったインテーク・マニホールドによって、高回転域におけるエアの吸気量が増加しました。レッドゾーンまでパワーが途切れない、力強い加速が生み出されます。その最高出力は、先代モデルの573psを上回る600psまで引き上げられ、鋭いスロットル・レスポンスを実現しました。パワーの増強に合わせて、8速トランスミッションも進化しました。キャリブレーションを調整することで、低速時の洗練性が増し、素早いギヤシフトに加え、精密でレスポンスに優れたシフトフィールを実現しました。また、足回りでは、サスペンション、ダンパー設定、スプリング・レート、アンチロールバーのブッシュが再調整され、しなやかな乗り心地を犠牲にすることなく、よりスポーティでダイレクトな乗り味が生み出されています。

VANQUISH ザガート

ヴァンキッシュ ザガートとは、最高出力600psのV12エンジンを搭載する、「アストンマーティン・ヴァンキッシュS」をベースとしたスペシャルモデルであり、ザガートの手になるデザインはもちろん、モデルごとに異なるチューニングを施したサスペンションのアダプティブ・ダンピング機能も特徴とされています。イタリアのカロッツェリアであるザガート(社名はSZデザイン)が手がけた2台の特別仕様なアストンマーティンです。

アストンマーティン VALKYRIE

アストンマーティンヴァルキリーAMR PROは1100馬力/車重1000kgと言う信じられないスペックを持ち、メルセデスAMGプロジェクトONEを軽く凌駕するどころかLMP1マシンやF1マシンに匹敵するスペックを持ちます。このヴァルキリーには地球には無い、月に存在する塵を使った特別色Karosserie Lunar Redが採用されています。宇宙からの成分を使用した世界で最初の車になります。

アストンマーティン DBS

アストンマーティンでは前述の通り沢山の車種がラインナップしていましたが、そのなかでも007カジノ・ロワイヤルの劇中車として登場したアストンマーティンDBSについて、より詳しく解説します。

アストンマーティンDBSは、1967年~72年に一度市場に登場しその名前を使用したことがありました。二度目に登場したカジノ・ロワイヤルにおけるアストンマーティンは、2004年のヴァンキッシュSから進化をしてできた車種です。映画終了後に2007年のフランクフルトモーターショーで正式に発表、2003年にDBSは2012年に生産を終了し、DBS Volanteと名付けられたDBSのコンバーチブルバージョンが発表されました。第二世代のアストンマーティンヴァンキッシュに受け継がれました。

アストンマーティンDBSのスペック
アストンマーティンDBSのスペックは非常に高いことで有名です。場合によってはレーシングカーを凌駕する場合もあるほどです。スペック(仕様)をご紹介します。

V12気筒エンジン総排気量5,935㏄
トランスミッション6速マニュアル
ドライブトレインフロントエンジン
重量1,695㎏
燃費4.25km
最大パワー6,500rpm

さらに詳細なDBSのスペックを紹介

DBSのトランスミッションは、DBSにはGrazianoの6速マニュアルトランスアスクルとオプションの「Touchtronic2」6速オートマチックトランスミッションが導入されています。

DBSのパフォーマンスは、アストンマーティンの5.9リットルが装備されているV12エンジンです。同様のエンジンがDBR9とDBRS9といったレーシングカーでも使われています。DBSのエンジンは6,500rmpで570Nmのトルクを発生します。エンジンはまた、アクティブバイパスバルブエンジンを採用しており、回転数を5,500rmp以上に上げるとエンジンに吸入される空気量を増やすことができ、0秒から62mphまで4.3秒で走行し、最大速度は307km/hです。

DBSのハンドリングは、VHジェネレーションⅡプラットフォームを使用しています。このプラットフォームは、車全体に強度と剛性を提供します。この構造のおかげで、車の重量の85%がホイールベースの間に保持されます。その結果、コーナーリング時のハンドル、応答性、感触が向上します。アストンマーティンはまたアダプティブダンピングシステム(ADS)を開発しました。オンにすると、ADSはサスペンション設定を自動的に変更して、ドライバーが常に高いレベルで車をコントロールできるようにします。さらに、スロットルとブレーキの反応が向上するので、ステアリングがシャープになります。

重量を可能な限り低く保つために、アストンマーティンは車全体に炭素繊維を大量に使用しています。
ボンネット、フロントウィング、ドア周りは全て炭素繊維でできています。屋根とドアはアルミニウム製です。その結果、その対策を行っていないDB9から比較すると30kgの減量に成功しました。また、フロントウィングにカーボンファイバースプリッターを取り付け、ハンドリング性を高め、カーボンファイバーリアディフーザーを採用して高速安定性を高めました。

DBSの内装(インテリア)は、炭素繊維、アルカンタラ、レザー素材、木材、ステンレスおよびアルミニウムの合成素材でできています。ドアパネルには炭素繊維で蓋をしています。

以上がアストンマーティンDBSのスペックです。非常に高いことがお分かりいただけるかと思います。ですが特筆すべきはスペックだけではありません。なんと言ってもデザインとブランドイメージが非常に高いのです。

アストンマーティンDBSのデザイン性

まずはその特徴的なデザインですが、アストンマーティンDBSは圧倒的な曲線美を持った美しい車です。その素晴らしいデザインを生み出したデザイナーはマレック・レイヒマンとヘンリック・フィスカーです。

デザインと共に特筆すべきはブランドイメージです。特にそのブランドイメージに貢献しているのが、映画007ではないでしょうか?

007カジノ・ロワイヤルの劇中車

ここからは、劇中車としてアストンマーティンDBSが登場する映画007カジノ・ロワイヤルについてご紹介したいと思います。

カジノ・ロワイヤルは2006年に公開されたスパイ映画です。007シリーズの第21作目にあたります。さらにカジノ・ロワイヤルはその脚本のすばらしさから何度も映画化されています。2006年の映画化において3度目の映画化となりました。この映画において象徴的であったのはジェームズ・ボンドの交代です。ボンドシリーズにおいて定期的に主役であるジェームズボンド役の俳優が変わるのですが、この映画の前まではピアース・ブロスナンがジェームズボンド役を務めていました。ピアース・ブロスナンはあまりにもはまり役でジェームズボンドにピッタリだと言われていました。
そして、あまりにもその印象が強かったので、主役が変わるとなると非常に否定的な意見を持つ人が多くいました。それが、ダニエルクレイグです。果たしてダニエルクレイグがジェームズボンドを違和感なく演じることができるのか?あまりにもピアース・ブロスナンと印象が違いすぎるので戸惑う方も多くいました。ですがそのような不安はこの映画の公開と共にすべて吹き飛んでしまいました。ダニエルクレイグは歴代のジェームズボンドの中でも最も素晴らしいといった評価を受けるほどに映画の中で圧倒的な魅力を放ちました。そんなダニエルクレイグが初めてジェームズボンドを演じたのがこのカジノ・ロワイヤルです。

内容を多く語ることはできませんが非常に完成度の高い映画となっています。そんな007のカジノ・ロワイヤルにおいて主役級に存在感をもつアストンマーティンDBSにも注目しながら、ぜひこちらの映画をご覧ください。

まとめ

イギリスの国民的映画にも登場し、圧倒的なブランド力をもつアストンマーティンについて、こちらの記事では詳しく解説しました。今回ご紹介したアストンマーティンは、劇中でも活躍していますので、併せてぜひご覧ください。