2020年10月26日に行われた菅首相による国会での所信表明演説において「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱酸素社会の実現を目指す」という宣言がありました。この、カーボンニュートラル宣言のあと同年12月には東京都でも2030年までに純ガソリン乗用車の新車販売ゼロを目指すと表明しています。このカーボンニュートラル宣言により受ける影響は、新車の販売をするメーカーだけではありません。
日本が2030年脱ガソリン車を目指す中、中古車は走り続けることが出来るのでしょうか。
中古車が活躍する将来のために新燃料が必須?
2021年4月22日に、日本自動車工業会(JAMA)の会長豊田章男氏はオンライン会見において以下のような発言をされていました。日本らしいカーボンニュートラル実現の道筋があるのではないかということでございます。日本には優れた環境技術・省エネ技術が沢山あります。何よりもこの優れた技術を組み合わせる複合技術こそが、日本独自の強みであると思っております。今、エネルギー業界ではe-fuelやバイオ燃料などカーボンニュートラル燃料という技術革新に取り組まれております。日本の自動車産業が持っている高効率のエンジンとモーターの複合技術に、この新しい燃料を組み合わせることが出来れば、大幅なCO2削減を図れるようになります。そうなれば、既存のインフラが使えるだけでなく、中古車や既販車も含めた、すべてのクルマでCO2削減を図れるようになります。(会見より一部抜粋)
バイオ燃料とは
豊田会長が発言されていた水素で作るe-fuel(合成燃料)やバイオ燃料とは、どのような燃料なのでしょうか。バイオ燃料のバイオとは、バイオテクノロジー(化学反応あるいはその機能を工業的に利用・応用する技術)のこと?と思う方もいらっしゃるかもしれません。実は、バイオ燃料のバイオとはバイオマス(生物資源)のこと。バイオマス(動物や植物を原料とする)燃料ということなのです。
資源エネルギー庁によると、再生可能エネルギーで車に使用できるバイオマス燃料は2通りあり、バイオエタノールとバイオディーゼル燃料があります。
一般車両に給油可能なバイオエタノールは、バガス(さとうきびカス)などの資源を回収し、エタノール製造プラントで燃料を製造する工程になります。ディーゼル車両に給油可能なバイオディーゼル燃料は、食品工場からの廃食油などを回収し、バイオディーゼル燃料製造工場で燃料を製造します。
どちらも今までは捨てられていた部分の資源カスや廃食油を利用し、車の燃料になるのは驚きですね。
ガソリン車にバイオ燃料は使えるの?
純ガソリン車に、バイオエタノールを使うことが出来るのでしょうか。バイオ由来のエタノールは、ガソリン代替燃料とすることが可能です。
実はすでに国内のガソリンスタンドにおいて、バイオエタノールが混合されたガソリンの供給は開始されています。しかし、現時点では3%の混合までとなっており、高濃度エタノールの混合燃料は日本国内では実績がありません。エタノール混合割合が高くなることで、CO2削減効果は上がると言われており、先進バイオ(高濃度エタノール混合)燃料が将来的に生産できるように研究が続けられています。
純ガソリン車で人気の車といえば
現在もハイブリッドモデルやEVモデルの販売予定がなく純ガソリン車のみの生産で、生産を終了してほしくない、これからも乗り続けたいと思われる車が沢山あります。特に車好きの方であれば、一台だけでなく何台もそんな車が思い浮かぶのではないでしょうか。こちらでは純ガソリン車モデルのみの製造販売されている車の中から、人気の車種をいくつかご紹介します。
日産自動車のGT-R
日産自動車のGT-Rといえば、1969年から1972年の間販売されていた人気のスカイラインGT-R(通称ハコスカ)の後継車です。2007年に販売を開始、フルモデルチェンジはないものの、毎年進化するイヤーモデル制度がとられています。2021年5月現在販売されているモデルは、GT-R Premium edition、GT-R Black edition、GT-R Pure edition、GT-R Track edition engineered by NISMOとなります。GT-Rの特徴というと重心位置を後車軸よりも低く設定し、徹底的に扁平化しているトランスミッションです。これにより走行中の車の前後の重量バランスがとられています。GT-Rの前身であるスカイラインGT-Rは、日本を代表する高性能車だったこともあり、GT-Rも走行性能に特化しています。
GT-R現行モデルのスペック主要諸元
全長・全幅・全高:4710mm・1895mm・1370mm
最小回転半径:5.7m
燃料消費率:7.8km/L(V型6気筒ガソリンエンジン)
駆動方式:四輪駆動 総排気量:3.799L
トヨタのGR SUPRA
トヨタのGRといえば、GAZOORacingの略称です。トヨタのモータースポーツチーム、TOYOTA GAZOO Racingがモータースポーツに参戦するなかで培った技術が注がれているトヨタのスポーツカーブランドとなっています。チューニングによる走りを追求したGRのみの専用車であるGRと、すでに販売されている車種からGRが手掛けたスポーツコンバージョンラインのGR SPORTという二つのブランドがあります。現在GR専用車はGRYARISとGR SUPRAがあり、今年度中にGR86が販売予定となっています。こちらではGR SUPRAについて詳しく紹介します。スープラというと、初代モデルは1978年に登場し、現行モデルは2019年にフルモデルチェンジを行った5代目モデルです。総排気量2.0LのB48型エンジン搭載グレードがSZとSZ-R、3.0LのB58エンジン搭載車がRZとなります。3.0L、B58エンジンは直列6気筒エンジンで最高出力285kW、最大トルク500N・mです。
GR SUPRA現行モデル(RZグレード)のスペック主要諸元
全長・全幅・全高:4380mm・1865mm・1290mm
最小回転半径:5.2m
燃料消費率:12.0km/L(直列6気筒ガソリンエンジン)
駆動方式:後輪駆動(FR) 総排気量:2.997L
これからのガソリン車の未来
日本国内の自動車製造メーカーでは、EV車や燃料電池自動車、ハイブリッドモデルの開発が進んでいます。特にトヨタ自動車では、ガソリン車モデルとハイブリッドモデルのどちらも製造販売をしている車種が多く、ガソリン車のみのモデルは減少しています。しかし、ハイブリッドモデルとガソリン車モデルの新車販売価格を比べると差があり、ハイブリッドモデルを選ぶことで高額になります。燃料消費率でその差額のもとをとれるかというと、カタログ燃費で比較したとしても実は十数年以上乗り続けなければ難しいといわれています。ガソリン車を様々な理由から選び、今後も乗り続けていくためには新燃料開発が大事なキーポイントになることは間違いないでしょう。