イグニッションコイルが故障しても車は走るの?症状や診断方法もご紹介!

イグニッションコイルとは、車の内燃機関(エンジン)において、混合気を爆発させる装置(スパークプラグ)に電気を送る役割を持つ装置です。

イグニッションコイルは車のエンジン稼働時に同時に稼働する装置のため、どうしても劣化は避けられず、壊れることがあります。

頻繁に故障する装置ではないものの、イグニッションコイルが壊れてしまうとスパークプラグに電気が送られなくなり、爆発によってエネルギーを発生させることもできなくなります。そのため、もしエンジンが正常に動いていなければ、その他の内燃機関における装置同様に、イグニッションコイルの故障も疑うべき要因の一つであるということが分かります。

今回は、イグニッションコイルの故障について、イグニッションコイルの故障の原因や簡単にできる診断方法などもご紹介していきます。

イグニッションコイルが故障しても車は走行できるのか?

イグニッションコイルが故障しても走行を続けることができる場合もあります。その理由はイグニッションコイルの仕組みとして複数同時に稼働する装置のため、一つのイグニッションコイルが故障したとしても残ったピストンで車を動かす力が発生するためです。

例えば、直列3気筒エンジンを搭載する車があったとしましょう。1番のイグニッションコイルが故障しても、2番と3番のピストンだけで車を動かすことができます。しかし1番と2番が故障してしまった場合、3番だけの力では発生する動力エネルギーが足りず、車を動かすことはできません。このようにイグニッションコイルが一つだけ故障した場合であれば、車は走行することができますが、3つのうち1つのピストンから動力を得られないということは、その分パワーが低下するということです。

動力エネルギーが足りないことにより、走行中に加速がもたついていたりアイドリング不調など、何かしらの症状は必ず現れます。車を走らせていて、いつもと違うなと感じた場合はすぐに整備工場へ行き診断をお願いしましょう。

そもそもイグニッションコイルの役割とは

イグニッションコイルの役割は、点火装置であるスパークプラグに電気を送る役割を持ちます。

スパークプラグは火花を出す装置であるため、大きな電力が必要です。しかし車の電力は12Vしかなく、12Vのままスパークプラグに電力を送っても作動しません。そのためイグニッションコイルで12Vの電力を、1万~3万Vという大電流に変換しています。この原理は少し複雑なので省略しますが、一時的ではあるものの、スパークプラグに必要な大電流を作りだす装置だと覚えてもらえばいいでしょう。

余談ですが昔のイグニッションコイルはとても大きく、一つ一つ独立して配置することができませんでした。
そこで各プラグに通電させるために使用されていた装置が「ディストリビューター」です。円錐状の装置であり、ディストリビューターから出ているプラグコードによって各プラグへ通電させていたのです。

しかし、機械的に作動していたということもあり、通電不良をよく起こし、アイドリング不調や加速不足の原因となることも多かったという歴史もあります。小型のイグニッションコイルができたことにより、ディストリビューターは現在、めったに見ることがなくなりました。この背景を考えると、あんなに小さいにも関わらず大電流を作り出せる現在のイグニッションコイルが、どれだけ高性能なのかが分かるのではないでしょうか。

イグニッションコイル故障の原因はスパークプラグかも

イグニッションコイルの故障原因の一つに、スパークプラグの故障が挙げられます。大電流の必要なスパークプラグが故障することによって、大電流の行き場がなくなりイグニッションコイルに大きな負荷がかかるためです。そして負荷に耐えきれなくなってしまったタイミングで故障する場合もあります。もしそうなってしまった場合、プラグを交換しても症状は直りません。

2つ同時に交換する必要がありますが、症状だけを見るとプラグとイグニッションコイルどちらにも考えられ、プラグが原因だとする場合もあるでしょう。このように車の故障診断はとても難しく、あらゆる可能性を考えるる必要があるのです。

イグニッションコイルの寿命は約10年ほどといわれていますが、10年以上持つものも多く、壊れるタイミングは使用頻度や使用方法、その他の条件によるところが大きいと考えることもできるのではないでしょうか。

イグニッションコイルが故障した場合の症状や診断方法をご紹介!

ではイグニッションコイルが故障した場合、どのような症状が出るのでしょうか。また、簡単にできる故障診断方法についてもご紹介していきます。

症状

イグニッションコイルが故障すると、下記のような症状がみられます。

  1. アイドリングが安定しない
  2. ノッキングしている
  3. エンストする
  4. 加速がもたつく
  5. エンジンチェックランプが点灯
  6. エンジンがかからない
  7. エンジン始動後の振動が大きい

先程、イグニッションコイルが故障してもエンジンはかかるとお伝えしましたが、それは単体もしくはエンジンがかかるほど少数での場合のみです。複数のイグニッションコイルが同時に故障した場合、エンジンを始動させる力がなくなります。

そういった場合はエンジンを始動させることができないのです。エンジンのトラブルはさまざまで、ノッキングがあるからといって、一概にイグニッションコイルの故障だとは考えられません。しかし、上記のような症状が複数出ている場合は、イグニッションコイルである可能性が高くなります。

もしエンジンがいつもと違うなと感じたなら、どのような症状が出ているかをしっかりと判断することが大切でしょう。また、発生している症状を記憶しておき、修理をお願いする整備工場へしっかりと伝えることで診断時間の短縮や正確な診断が期待できます。

診断方法

点火系統のトラブルが発生した場合、その多くはスパークプラグかイグニッションコイルに問題があります。どちらが問題なのかを判断するのはとても簡単です。

手順としては以下の通りです。

  1. エンジンをかけながら1番に取り付けられているカプラーを外す
  2. 外したカプラーを元に戻す
  3. 同じ手順で2番3番と続けていく

なぜカプラーを外すのかというと、強制的にイグニッションコイルが作動できない状況を作るためです。もしイグニッションコイルが本当に故障していれば、カプラーを外してもエンジンの挙動は変わりません。カプラーを外して回転数が落ちれば、そのイグニッションコイルは正常であると判断できます。

もし6気筒のエンジンだった場合、複数のイグニッションコイルが故障している場合もあるため、全てのコイルで試してみましょう。
しかしこの方法には注意点があります。もしスパークプラグが故障していた場合でも、イグニッションコイルが故障していたときと同じ症状が出るので、スパークプラグが故障していないかの判断も必要となります。プラグの移動もできるなら、プラグとイグニッションコイル両方の可能性を考え診断すればさらに精度は上がるでしょう。

しかし素人診断でここまでできるなら十分です。後は整備工場に持っていき、さらに精密な判断をお願いしましょう。

まとめ

イグニッションコイルは、スパークプラグへ電力を供給する大切なパーツです。
故障すればエンジン不調の原因となり、修理しなければなりません。またイグニッションコイルとスパークプラグ、2つの装置が故障した場合の症状はほとんど同じであり、修理するためにはどちらが壊れているのかを判断する必要があります。

診断方法は説明した通りですが、これらの症状に当てはまるからといって、必ずしもイグニッションコイルが原因ではないということを覚えておきましょう。イグニッションコイルの寿命は10年ほどといわれています。古い中古車を購入するのであれば、現車を確認時にエンジンをかけ、これらの装置が正常に動いているかをしっかりと確認することが大切です。