雪道で立ち往生が発生したらドライバーはどう対応すればいいのか

2022年の年末は、降雪量が多いことで知られる北海道地方でも観測史上一位(2022/12/22礼文地点、日高地点)を更新するような記録的大雪になった所もあり、全国的にも大雪による通行止めとなった道路もあるなど、大きな影響を受けました。

2022年から2023年の年越しは穏やかな天候となったものの、年明けからは正月寒波が日本海側各地を襲い、1月2日から4日にかけて冬型気候が強まったことから、各地で大規模な積雪に悩まされていました。年末年始の長期休暇も重なり、普段あまり車を利用しないという方も運転する機会が多かったと思いますが、運転し慣れない冬の雪道に困った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

こちらでは、もしも雪道で立ち往生してしまった時の対応方法、雪道で立ち往生しないための対策について解説します。

雪道で立ち往生してしまった時の対応方法

雪道で運転中に車が立ち往生してしまった時、どのような対応をすればいいのかご存知でしょうか。注意しなければいけないポイントや、前もって準備しておくことなどこちらでご紹介します。

最も危険な一酸化炭素中毒

実は冬季の積雪によって雪道が車内で立ち往生してしまった時、最も多く起きている事故が一酸化炭素中毒です。一酸化炭素中毒は、本来は車外へ排出されるはずの排ガスが、排出口部分に雪が溜まって車内へと逆流したり、車外に排出された排ガスが車の周辺を雪に囲まれていたことにより車内に入り込み、車内空間に排ガスが溜まってしまうことで起こります。排ガスに含まれる一酸化炭素は透無色無臭で空気よりも軽い気体(ガス)となっていて、車内に入り込んでいても中にいる人は気づくことができません。

一酸化炭素はもともと不完全燃焼により発生するガスとなっています。例えば、酸素が不足している状態でガス機器や石油機器が不完全燃焼を起こすと、有毒なガスが発生してしまいます。一酸化炭素は有毒ガスのなかでも、気づきにくく有毒性が高いため危険といわれていて、酸素中の一酸化炭素濃度が1.28%を超えると1~3分程度で死に至るといわれています。

そのため、雪の中で立ち往生をしている時にエンジンをかけてエアコンによる暖房を使用すること自体は問題ではないものの、排ガスが排出口から適切に排出できない状態であったり、雪によって車内に入り込むと、車内からの空気は換気されず一酸化炭素濃度が上がってしまうため、一酸化炭素中毒が起こる可能性が高いのです。

車中で一酸化炭素中毒にならないための対策
もしも雪の中で立ち往生をしてしまった場合、雪かき等も難しいのであればガソリン車の場合はエンジンをかけず、毛布等を車内に常備して暖をとるなどする必要があります。もしものために、簡易防寒具や毛布、車載可能な長期保存できるホッカイロなどを車載準備しておくと良いでしょう。

エコノミークラス症候群

2022年の年末にも、新潟県内の高速道路において雪による38時間の通行止めが発生していました。この時も最初は770台、後に減少はしたものの300台を超える車両が立ち往生することになり、なかには30時間以上立ち往生した車内に滞在することになったという方もいたようです。車内で同じ体勢を長時間続けることもあり、体調不良になる可能性もあります。特に気を付けなくてはいけない症状が、「エコノミークラス症候群」です。

エコノミークラス症候群とは、食事や水分も十分にとれていないまま、車などの窮屈な(狭い)座席に長時間座って足を動かさないでいることで、血行不良が起こってしまい、血液が固まりやすい状態になります。この状態を続けてしまうことで、血の塊(血栓)が発生し、血の流れに沿って肺に詰まると、肺塞栓(はいそくせん)を引き起こす可能性があります。肺塞栓とは、肺血栓塞栓症という病気で、呼吸困難や胸痛、心停止をきたすこともあり大変危険です。

車中でのエコノミークラス症候群の対策
車内で長時間滞在しなくてはいけない状況下となった時、エコノミークラス症候群にならないための予防対策をご紹介します。
おすすめの予防対策は、血行をよくするための軽い体操やストレッチですが、狭い車内では難しい可能性もありますので、その場合はかかとの上げ下ろし運動や、ふくらはぎを軽くもんで、血行を促すなどが良いでしょう。また、眠る時は足を上に上げて血流が下がらないようにします。身に着けている衣服による締め付けもあまりよくありませんので、ベルトを締めている人は緩める、圧迫するストッキングやタイツなどをはかないことをおすすめします。また、喫煙(ニコチンの摂取)は、血管を収縮させ血流を悪くする原因となりますので、狭い車内に長時間いなければいけないなど緊急時は控えるようにしましょう。

雪道走行のための事前対策

夏用タイヤからスタッドレスタイヤに履き替えていれば、雪道であっても問題ないのではと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際に雪道を走行してみると、スタッドレスタイヤだけでは対応できない路面状況も決して少なくないのです。

スタッドレスタイヤだけでは雪道の走行が困難な場合も

スタッドレスタイヤを装着していても、積雪によってできた雪道は走行が難しい場合があります。除雪作業が追い付かず積雪が残る道路や、普段積雪がないため除雪作業に時間かかる道路、山間部などの勾配がある雪道では、スタッドレスタイヤだけでは走行中にスリップが起こったり、スタックして立ち往生してしまう危険性があるのです。

スタッドレスタイヤとは、もともと冬タイヤの主流とされていたスタッド(鋲)のついているスパイクタイヤからスタッド(鋲)を外した、冬タイヤとしての耐性をもったタイヤのことです。スパイクタイヤは、スパイクが路面を削り、粉じんを起こすことから道路や環境への影響があるとされ、現在は使用されなくなっています。

スタッドレスタイヤの特徴

スタッドレスタイヤの特徴は、スタッド(鋲)はなく、タイヤに使用されているゴムの質によりグリップ性能(転がり抵抗性能)を高くしているところです。従来の夏タイヤに使用されているゴムの性質として、低温時に硬くなるというものがあります。夏タイヤのまま、路面凍結するような低温度の道路を走行すると、ゴムが低温で硬くなるため滑りを誘発してしまうのです。その点、スタッドレスタイヤに使用されているゴムは、低温度域でも硬くなりにくい性質をもっています。また、スタッドレスタイヤには冬タイヤとしての使用基準があり、新品時の溝の深さから約50%摩耗した状態になってしまうと、使用ができないとされているため、厳しくすることによりグリップ性能の高いタイヤに限られていることから安全性も高くなっています。

しかし、一般的なスタッドレスタイヤは凍結や雨天時の路面状況など濡れた路面でのグリップ性能は高くなっていますが、市街地外など道路環境が異なり、急な降雪によって積雪している道路に対しての耐性が高いとは言えません。雪道走行でタイヤの溝に雪が詰まると滑りやすくなり、スタッドレスタイヤを装着していても、路上でスタックして立ち往生してしまう危険性もあります。

チェーン規制の対策にもなる常備タイヤチェーン

前述のとおり、スタッドレスタイヤだけでは雪道対応が難しい場合もあります。さらに雪道に対し対策をとるためにも常備しておくことをおすすめするのが、タイヤに巻き付けるタイプのタイヤチェーンを車内に常備しておくいうことです。タイヤチェーンはタイヤにとりつける雪の道路走行対策です。装着は基本的に駆動輪ですが、中には4輪全てに装着が必要なものもあります。ゴム製、樹脂製、金属製があり、装着時に車を移動させる必要があるタイプもあるため、装着場所やタイミングを選ぶものには注意が必要です。また、増し締めを必要とするものもあり、種類やかたちによっては、ひとりで装着できないものもありますので、用途や自分で装着出来るかなど、確認しながら購入する必要があります。

一人でタイヤチェーンを装着する機会が多いのであれば、金属性のシンプルなものが良いでしょう。突然の大雪や、一部区間によるチェーン規制時など、外出先でタイヤチェーンの取付が必須になった場合は、短時間に装着ができて移動が不要なタイプのタイヤチェーンを用意するようにしましょう。

チェーン規制は、大雪特別警報や大雪に対する緊急発表が行われるような異例の降雪があるときに行います。チェーン規制が実施される道路は、主に急な上り下りがある峠などで、過去に雪による立ち往生や通行止めが起こった場所の付近で、それまでにタイヤチェーンの着脱ができる場所かつ通行止めが解除されるまで待機できる場所がある区間で実施が行われます。チェーン規制が実施されると、規制区間の手前においてチェーン装着状況の確認が行われ、装着していない車両は規制道路の通行ができません。

まとめ

冬道を車で走行中、もしも雪で立ち往生したらどのように対応すべきか、また立ち往生しないための予防策について解説しました。

雪道でもしも立ち往生してしまったら、車内での一酸化炭素中毒と、長時間車内に滞在することで起こる可能性があるエコノミークラス症候群に注意が必要です。もしも立ち往生してしまった時のために、雪道を走行する予定があるという方は前もって車内に簡易防寒具、非常食、水分補給用の飲料を用意しておくと良いでしょう。

また、冬道を走行する時は予め基準値に適応したスタッドレスタイヤを四輪装着し、タイヤチェーンを常備しておくことをおすすめします。