各国の車検制度の違いとは?日本の車検と世界の車検を比較する

車の豆知識

海外の中古車市場で、日本の中古車はメンテナンス状態が良い、耐久性や信頼性も高いといった良い評価を得ています。そのため、日本から輸出される中古車は、海外市場で高値取引されていることも少なくありません。

日本の中古車が良い状態を保っている一因として挙げられているのが、日本の車検制度です。日本では道路運送車両法により、新車登録から3年目、それ以降は2年毎に車検を受け、合格しなければ公道を走行することができないと定められています。この車検の度に厳しい検査を受けるためには、日ごろのメンテナンスが欠かせないことから、車も良い状態を維持することができています。

今回は、世界の車検制度と日本の車検制度の違いについて詳しく解説します。

各国の車検制度とは

日本では普通乗用車の場合、新車登録から初めての車検は3年目に、2回目以降は2年毎に、定期車検を受けるという決まりがあります。他の国の車検制度はどのようになっているのでしょうか?

アメリカでは国の制度として車検はありませんが、ニューヨーク州やカリフォルニア州などの特定の州では車検があります。また、イタリアでは新車購入後10年間は車検がありません。
イギリス・ドイツ・フランスといったヨーロッパの国は日本と似た車検制度がある国が多く、ブラジルでは近年国全土での定期車検義務化が決定され、排気ガステストだけでなく安全性確保のための安全性テストも義務化されました。また商用車のみの車検制度となっていたインドでも、廃車政策の一つとして車検に関する制度の草案が発表されています。

日本の車検制度とは

各国ごとに車検制度があっても、その時の検査項目は排気ガスの検査だけだったりと、日本のように細かく分類されてない場合もあります。国によってさまざまな車検制度ですが、なかでも日本の車検制度の点検項目は多いことで知られています。

日本の車検で点検する項目は、以下の9項目です。

  1. 同一性確認
  2. 内回り、足回り検査
  3. 下回り検査
  4. 外観検査
  5. サイドスリップ検査
  6. ブレーキ検査
  7. スピードメーター検査
  8. 光軸検査、光度検査
  9. 排出ガス検査

同一性確認は、車検証記載の内容と車両内容の相違がないか確認することです。まずは点検車両が正しいか確認をした後に、車両の外側と内側両方の点検を行います。この上記9項目一つでも認められなければ、車検を通すことはできず、整備をし直して再受験することになります。

海外での車検制度とは?

日本の車検は点検項目が多く、一つでも落とすと通らないため、はじめに整備を行ってから点検を受ける場合が多くなっています。しかし、イギリスやドイツでは先の整備は不要となっており、点検をして不具合があったところのみに、その後整備を行うというのが一般的です。一方車検がない国では、点検や整備などはすべて自己責任で行い、整備不備などで事故を起こした場合は多くの罰金を支払うことになる国もあるようです。

例えば、国自体では車検制度はないものの地域によって車検制度のあるアメリカのニューヨーク州では、車検は認定を受けた整備工場のみで受けることが可能です。点検項目として、安全テストとエミッションテスト(車の排気ガステスト)を受けます。テストに合格するとナンバータグ用のステッカーが交付されて、車体に貼り付けます。アメリカは地域ごとに車検内容が異なるため、地域によってはエミッションテストのみであったり、受験が1年毎のところもあれば2年毎もあり、州ごとに異なるようです。

日本の車検と海外の車検の違い

日本の車検と海外の車検の違いを、車検を受ける頻度や車検にかかる費用等で比べてみました。

各国の車検制度の頻度はどのくらい?

日本国内での車検を受検する頻度については、新車登録から初めての継続検査を受けるまでは3年、以降は2年毎に毎年受ける必要があります。では、各国の車検制度の頻度はどうなっているのでしょうか。

国名初回から2回目までの期間2回目以降
日本3年2年毎
アメリカ(ニューヨーク州) 1年1年毎
アメリカ(カリフォルニア州) 2年2年毎
ドイツ3年2年毎
イギリス3年1年毎
フランス4年2年毎
スウェーデン3年2回目2年
3回目以降1年毎
ベルギー4年1年毎
スイス4年2回目3年
3回目以降2年毎
シンガポール3年2回目2年
3回目以降1年毎
韓国4年2年毎

日本の車検費用と海外の車検費用

日本国内での車検費用というと、最も費用が抑えられる軽自動車でも50,000円弱はかかり、決して安い費用とは言えません。車体が大きくなると、さらに費用が高くなるため、車体によっては最低でも60,000円~70,000円かかることもあります。さらに、整備が必要な部分が増えると、整備・修理工賃等も嵩み、100,000円を超えることも多くなります。日本の車検費用は、費用の中でも法定費用という必ずかかる費用がありますので、最低限の価格よりも値引きしてもらうことはできません。必ず払わなくてはいけない法定費用のなかには、車検受検前に納める自賠責保険料や自動車重量税が含まれています。

海外では、車検の内容や点検項目が異なるほか、課税や保険制度も異なるため、車検費用も日本に比べると大きく差があります。例えば、韓国での検査場での車検は、2万ウォン~5万ウォンとなっており、日本円で換算すると3,000円前後といった手ごろな価格で受検することが可能になっています。

また、アメリカのカリフォルニア州での車検では、エミッションテストのみとなり、テストの費用はおよそ5,000円からとなっています。車検費用が手ごろに抑えられている分、お得に感じるかもしれませんが、検査場でできることが限られていたり、整備などは自身で整備工場を探さなければならないなど手がかかる部分もあります。特にアメリカでは、日常的に個人で修理やメンテナンスをするドライバーが多く、自分で整備することに慣れています。日本から輸入された中古車のなかで、海外で整備がしやすいマニュアルトランスミッション(MT)車に人気が集まるのは、このような理由もあるようです。

まとめ

日本以上の頻度の国もあれば、車検制度そのものがない国まで様々あることをご紹介しました。日本の車検制度は、狭い道路や国土面積に対して多い人口(=人口密度の高さ)が原因の交通量の多さなど、日本の交通事情にあわせて安全のためにも厳しく設定されたものであると考えられます。多くの人にとって、車検を含む車の維持費は高く感じるとは思いますが、安全性の確保を考えると今の車検制度は必要なものといえるでしょう。